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夜と朝のあいだ

東海地方に住む独身男のノート

アキラです。バツ無し独身男のノート。

「この国は俺が守る」を読んでみた

Books

田中角栄通産大臣として日米繊維摩擦交渉に臨む第一章から、失意の中この世を去る第九章まで、田中角栄の軌跡を追ったノンフィクション。
ノンフィクションよりも評伝と言ったほうが近いかもしれない。

小学生のときに田中角栄が総理に就任したんだが、その時の両親の興奮ぶりは覚えている。毎日、夕食のときには田中角栄の話題を両親が話していたな。中学に上がる頃にロッキード事件が起き、その時のテレビの加熱報道なんかもよく覚えてる。やがて逮捕、保釈、裁判と続くのだが、社会人になった後も最高裁で争われていたし、その係争中に亡くなるんだが、考えてみると、物心がついてから、ずっと田中角栄という人物を見てきたんだな、と思う。

田中角栄ほど賛否両論ある日本の政治家も少ないだろうけど、本書は、田中側からの視点に立って書かれている。
決断と実行、この言葉をまさに地で行く政治家との認識は、おおいに同意できる部分である。アメリカの先手をとって、総理就任後三ヶ月で「日中国交正常化」を成し遂げ、未来を見据えての資源外交。大国アメリカの顔色を窺いながらも、国民のためにという信念によって実行する。コンピューター付きブルドーザーと言われるゆえんである。

本書での読みどころは、各国首脳との会談の部分だ。
特に、日中国交正常化のために訪中した田中と周恩来との会談場面は、緊張感がある。当時の熱狂を子ども心に憶えてる自分は、「あ~、こういう駆け引きの末に国交が成立したのか」と、裏話を知ったような感覚で読めた。とにかくすごい熱狂だったからなぁ。国交成立の記念にパンダが2頭贈られてきたのだが、上野動物園なんかは連日、超過密の混雑だったし・・・。今では考えられないけど、当時のデパートのぬいぐるみ売り場、パンダだらけだったな。

高い支持率で歓迎された宰相・田中角栄も就任後、わずか2年余りで退陣に追い込まれる。金脈問題である。あれほど熱狂して庶民宰相を迎えたマスコミや大衆も、180度方向転換。それに続くロッキード事件、元総理の逮捕と前代未聞の事態が進むのだが、このあたりも本書には描かれていて、「そういう見方もできるよね」と納得した。政治家の評価なんて、50年、100年経たないと出来ないと思う。あの加熱報道ぶりを知ってる身としては、当時、冷静な評価ができた人は何人も居なかったんじゃないかとも思うし。

本書では、ロッキード事件についても詳しく語られているんだが、海の向こうの一民間人の証言が、何故、大疑獄事件に発展したのかについて、アメリカの意思・キッシンジャーの思惑なども絡めて描かれていて興味深い。
また、後世になって問題が指摘される嘱託尋問調書についても、裁判で争う上での問題点について書かれている。扇動するマスコミ、付和雷同する大衆、数十年を経て、冷静に振り返ることが出来る。

田中=金というイメージが先行しがちだが、本書は田中角栄の功罪の功を改めて認識させる一冊だった。
今の時代、田中角栄のような政治家が、再び現れてもいいと思う。
本書にも書かれているが、東日本大震災のときに、もし田中角栄が居たら・・・。歴史にifはないけど、たしかに今のリーダーには実行力が求められると思う。

「BOOK」データベース~

総理就任3カ月で日中国交正常化を実現、独自の資源外交を展開する田中角栄に、大国アメリカの巧妙で執拗な罠。不世出の男の政治生命を奪い去った権力に肉薄する野心作。

田中角栄を知らない若い世代も、現代の日本の政治史を知る意味でも読んで損はないと思う。

 

この国は俺が守る [ 仲俊二郎 ]

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