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夜と朝のあいだ

東海地方に住む独身男のノート

アキラです。バツ無し独身男のノート。

「私の男」を読んでみた

Books

なんだろうね、この気味の悪さ。ホラーじゃないのに背中をゾクッとさせる感覚だ。
家族とか親子がテーマなのかもしれないけど、ここで描かれるのは歪んだ愛情だ。これが半端なく気味が悪い。

 

9歳のときに震災で家族を失った花。その花を引き取り養父となった淳悟。この物語は、40歳の淳悟と24歳の花を描いた第一章から、時間を遡る形で描かれている。
第一章は結婚を目前に控えた花の視点で、新婚旅行後まで。
第二章は、花の夫の視点で、花との出会い。
第三章は、淳悟の視点で、高校2年生の花。
第四章は、花の視点で、同じく16歳の時代。
第五章は、淳悟の恋人の視点で、中学入学前の花。
第六章は、花の視点で、十歳のときの震災から淳悟との生活までを書いている。

 

時代がどんどん遡る構成も珍しいけど、全編を通して流れるある種の気味悪さ。ハッキリと描かれているいるわけじゃないけど、二人の背後に「事件」のようなものを感じさせる描写。それが明らかになったときの、なんとも言えない感覚、この小説、すごい・・・。

 

主人公の花・・・かわいくない。というか、この小説の気味悪さの原因は、この少女にあると思う。淳悟も病んでるし、こんな親子が居たら、ホント気持ち悪い。
でも、どこかに居そうな気がしてくるんだよなぁ。これは作者の筆力の高さのなせる技だな。
淳悟や花の育った背景なんかも描かれてるんだけど、違和感を感じない。現実にこういう境遇で育つ人も居るだろうな、と思わせる。それだけに淳悟と花の病んでる姿にもリアリティが生まれてる。

 

淳悟と花の感情表現を抑えて描いてることで、気味の悪さが増幅されてる。読者が勝手に想像してしまうのだ。それも悪いほうへ・・・。
時代を遡ることで、最初に見えてなかった謎の答えが徐々に見えてくる。この徐々に見えてくるってところも、作者の腕なんだろうな。一気に謎の答えが判るよりも、章を進める事で少しずつ判ってくるんだが、これなんか、ジワジワと恐怖を感じるような感覚に似てる。

 

初の桜庭作品だったけど、良いものを読んだ。

☆4個

背表紙~

落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。

 

たしかに凄い筆力。
最後まで読み終わって、第一章を読み返してみると、二人の「これから」が気になる。