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夜と朝のあいだ

東海地方に住む独身男のノート

アキラです。バツ無し独身男のノート。

「人間の尊厳と八〇〇メートル」を読んでみた

Books

5編からなる短編集。作者の深水 黎一郎の著作は初めて読んだが、満足できる作品だ。

・「人間の尊厳と八〇〇メートル」
日本推理作家協会賞受賞作。ラストでのオチが秀逸で、読後感も良い。
量子力学と陸上の八〇〇メール走が、人間の尊厳とどう関わってくるのか・・・。作中の会話がとても上手く納得させられる。
それだけに最後のオチが効いてくるのだが・・・。

・「北欧二題」
実際に起きた事件をもとに書かれたという作品。
この作品が5編の中で一番、気に入った。
最後まで読んで、ほのぼのさせられる読後感は、非常に秀逸。
また、ルビ以外はカタカナを一切使用しないという、なかなか実験的な作品でもある。この文体は、ミステリーが必要とするある種の雰囲気を醸し出すのにも有効と、作者は考えているそうだが、たしかに成功しているように思う。
ルビ以外にカタカナの無い文体と、ラストでの暖かな読後感。
一見、ミスマッチに思える組み合わせだが、大成功と言えるのではないだろうか。

・「特別警戒態勢」
中盤まで読んでいくと、およそ犯人が解ってしまった。5編の中では、かなり水準が下がる作品ではないだろうか。

・「完全犯罪あるいは善人の見えない牙」
ある女性が完全犯罪についての考察を述べている一遍。
ラストのオチは、「おっ!?」と思わせる意外性で楽しめた。

・「蜜月旅行」
新婚旅行でパリを訪れた男女の話。これといってミステリー的な要素の無い作品だが、なぜかページをめくる手が速くなる。
新郎の述べる薀蓄も面白く読めるし、なかなか楽しめる一遍。

5編に共通して言えるのだが、作中、世の中や世間の常識に対して、かなり痛烈な皮肉が述べられている。
的を得た記述だけに、読んでいて愉快な気分にもさせられる。


これから追いかけてみたい小説家の登場だ。



人間の尊厳と八〇〇メートル (創元推理文庫)




深水 黎一郎
2014-02-21