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夜と朝のあいだ

東海地方に住む独身男のノート

アキラです。バツ無し独身男のノート。

「転落」を読んでみた

Books

題名に惹かれてふと手に取った本書。
この作者は読んだこともないし、先に解説を読もうとしたんだけど、「この解説を読む前に是非本文を読んで頂きたい」の一文が......。
いつもは本を買う前に解説を読んでから買ってるんだけど、素直に解説者に従った。
何の予備知識もなく読み始めてみたんだが・・・。

アタリだった!
ダークな心理描写と各章で描かれるサプライズ。分類すると湊かなえ沼田まほかるが書くような「イヤミス」ってことになりそうだけど、とにかく人物の心理の描き方が上手い。
それにちょっとしたサプライズが各章に仕組まれていて、飽きないんだよな。
最後に大どんでん返しと言う小説ではなくて、所々に仕掛けられた小さなサプライズで読者を引っ張る小説。

第一章は、ホームレスの「ボク」と彼に”餌付け”して小さな犯罪を犯させる小学生。その関係は、やがて破滅的な結末を迎えるのだが、この第一章だけでも短編として成り立つような出来栄えだと思う。

第二章は、ホームレスの「ボク」を匿うことになった中年の女性の視点で描かれている。この女性の心理描写、勤めている病院での老人介護の描写など、上手すぎるんだよね。もしかして、作者は介護の経験が有るんじゃないか?って思うわせるぐらいだ。
また、ホームレスと彼女との関係も次第に明らかになり、ドキドキ感はますます上昇していく。

第三章は、再びホームレスの視点で描かれるんだけど、ここでもサプライズが・・・。
いやはやノックアウトさせられたなぁ。
まぁ、ノックアウトはオーバーだとしても、TKO負けぐらいの感覚はあるな。

ロクな人間は出てこないし、登場人物たちが考えていることもダーク、結末もけっしてハッピーエンドじゃないんだけど、読んで良かったな!と思わせる内容。
いわゆる「イヤミス」が苦手な人には合わないだろうけど、自分的には満足できた一冊。
育児や老人介護など現代人が抱える問題を絡めて、人間の心の汚い部分を抉り出してる本書、思わぬ掘り出し物だった。

☆4個

背表紙~

ホームレスになってしまった「ボク」は、食料を探していた神社で、小学生の麻由から弁当を手渡される。巧妙な「餌付け」の結果生まれた共犯関係は、運命を加速度的に転落へと向かわせる。見せ掛けの善意に隠された嫉妬・嘲笑・打算が醜くこぼれ落ちるとき、人は自分を守れるのか!?驚愕の心理サスペンス。

初めての永嶋作品だったけど、この感じは、初めて浦賀和宏さんの作品「彼女は存在しない」を読んだ時と同じ。
掘り出し物を見つけた喜びである。


転落【電子書籍】[ 永嶋恵美 ]

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感想(1件)