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夜と朝のあいだ

東海地方に住む独身男のノート

アキラです。バツ無し独身男のノート。

「誘拐児」を読んでみた

Books

昭和21年、戦後の混乱した日本で起こった誘拐事件と、その時効目前の15年後に起こった家政婦殺人事件。

おまえは、ほんとうの息子じゃないよ。私が誘拐......。」この言葉を最後に息を引き取った母親。
いったい自分は誰なのか?この謎を追う息子・良雄。
一方、家政婦殺人事件を追う刑事たち。この事件と15年前の誘拐事件が繋がりを見せ始め・・・。

プロットは興味をそそるんだよなぁ。いかにも重厚なミステリーって感じだし。プロローグなんかも闇市の混沌とした様子を上手く描いていて迫力がある。八月という真夏の季節感もこちらにまで暑さが伝わってくるような書き方。
こりゃ、傑作かも!?って思って読み進めたんだが・・・。

面白いんだけど、解りにくい小説。
登場人物が多いんだよね。いや、別に多くても良いんだけど、特徴がわかりにくい。例えば、刑事が二組登場するのだが、互いに反目しあってるのはいいけど、読んでいくうちに、どっちがどっちだか解らなくなりそうだった。もう少し、キャラに特徴を付けても良いと思うけどなぁ。

場面もコロコロ変わるから、なんか落ち着かない。この点については、東野圭吾氏が「場面転換も巧みで、読者を飽きさせない」と支持してるそうだけど、う~ん、そういう見方もできるのかなぁ、と渋々納得。

昭和21年の描写は、当時の生活感をだしてるし、目の前に情景が浮かぶような上手さ。それに対して、15年後(昭和36年)の描写はいただけない。時効の都合で昭和36年に設定してるんだろうけど、時代の持つ匂いが伝わってこない。昭和36年って、さすがに戦争直後のようなことはないにしても、まだまだ日本は貧しかった時代だけど、その匂いがしないんだよなぁ。
プロットが良いだけにもったいない気がするなぁ。

ついでに気になった点をあげると、母親の気持ち・感情が描かれてない。ラストで息子の気持ちは語られているし、ウンウンと納得させるだけの描写もされてるんだけど、母親の〇〇〇の行動の理由とか△△△した感情が抜けてるんだよね。このあたりを描いてあると、解りやすい物語になったと思う。

マイナス点を挙げたけど、概ね満足できる一冊だった。
動機と犯行手順、それに関わる人物の行動にも破綻はないし、構成自体は緻密。

最後、母を想う息子の言葉、ちょっぴりウルッとしてしまったな。

☆4個

背表紙~

終戦直後の夏、5歳の男の子が誘拐された。<使い古しの新円で百万円を用意しろ。場所は有楽町カストリ横丁>という脅迫状に従い、屈強な刑事たちが張り込むなか、誘拐犯は子どもを連れて逃げてしまう。そして15年後、とある殺人事件をきっかけに、再びこの誘拐事件が動き出す。第54回江戸川乱歩賞受賞作。

構成で読者を引っ張る小説だと想う。もっとキャラを特徴つけて丁寧な文章だと、かなりの傑作になったんじゃないかなぁ。まぁ、そうすると、今の倍ぐらいにページ数になっってしまうか・・・。

誘拐児 [ 翔田寛 ]

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感想(3件)